議事録
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2024年3月11日
第6回
中小企業DX研究会
日時: 2025年3月11日(火)15:00-17:00(終了後懇親会)
場所: 上代工業株式会社
本日の会合では、製造業のデジタル化・DX推進にまつわる先進的な取り組みが紹介され、大変刺激的な意見交換が行われました。
アジェンダ
1. 開会挨拶(西岡先生)
「モノづくりとデジタルが融合することで大きな変化が生まれると感じる。製造業が暗いイメージをもたれがちだったが、IT・デジタルとの組み合わせにより新しい価値を創出できる可能性を強く感じる。」
2. 事例発表・工場見学
2-1. 上代工業株式会社 神山様(情報システム担当)
- デジタル化への取り組みの経緯
2019年にiPadを30台導入し、Twitterで生産進捗を共有しようとしたが、利用率が低く失敗。原因は「データを見る文化の欠如」だった。
一方で導入した無料のLineworksは使われたが、チャットグループが乱立し、発言ルールも乱雑に。結果として、チームで仕事をする意識が希薄だったことが問題として浮上した。 - アジャイル型への転換
中小企業の強みである“小回りの良さ”を活かすために、アジャイル型の組織づくりが必要と考え、その要としてデジタル化を推進。2020年には情報の流れを可視化する全体図(ビジョン)を描き、IT投資を売上の3%に設定して補助金も活用。 - 社内システムの運用・育成
社内サイトのページビューを計測するなど、利用実態を把握しながら改善。トイレの可視化システムはベンダー担当者が自ら作成しており、「誰でも自分で作れる環境の醸成」が今後の目標。 - 兼務が多い中小企業での課題共有
同じ悩みを持つ情シス担当同士をつなぎ、意見交換や相談ができる場を作っていきたい。 - 会議資料の共有徹底
会議に資料を持参しないリーダークラスの社員には、参加を認めないルールを導入するなど、デジタルツールに限らず運用面の改善も行っている。
2-2. 上代工業株式会社 工場見学(45分)
上代工業の実際の現場を見学。デジタルを活用しながらも、職人の技能と融合させる取り組みを体感。
2-3. 株式会社大矢製作所 大矢社長
- 概況
川崎平間と横浜日吉の2拠点体制となり、人員の行き来が増えた結果、納期調整や管理が難化。従業員12名体制で柔軟な運用が求められた。 - 導入システム
- freee人事労務:工場で打刻し、給与計算から振込まで一元管理。
- kintone:工程進捗・トレーサビリティ、売上管理、従業員予定管理、材料発注などを行い、1つの注文の全工程をひとつの画面で確認できる。
- ECへの挑戦
- 酒器販売ではShopifyやLogilessを活用し、倉庫在庫の見える化やラベル印刷を自動化。
- 対面販売の信用をECにつなぐ戦略を模索中。
2-4. 日崎工業株式会社 三瓶社長
- 会社概況と理念経営
大型造形物や一品物を製造。2000年からクラウドを導入し、全社員にiPhoneを貸与。2013年に赤字を経験したことを機に「理念経営」に切り替え、社員第一主義を徹底。 - 勤務体系の改善
勤務時間を7.5hから8.0hに変えて給与を昇給。休日を111日から124日に増やすなど、働く環境を大幅に向上。 - GX(グリーントランスフォーメーション)の推進
- LED化や太陽光発電、EV車・蓄電池導入などで電気使用量とCO2排出量を大幅に削減。
- 補助金も活用しつつ、実質的な電気代を年520万円削減し、CO2を60%削減。
- 日々のエネルギー使用状況を社員がiPhoneでリアルタイムに把握。
2-5. 株式会社ネオテックジャパン 加留部社長
- 工場を持たないビジネスモデル
「設計や工程管理以前に、まずは夢の中身を一緒に考える」というスタンスで、顧客に近い立場から課題を聞き出す。 - ファクトリースキャナーによる工程管理
- ICカードで作業開始・終了を記録し、日報記入や事務集計を削減。
- ただし導入後の現場運用に課題があり、現場が自ら活用・改善を進められる体制づくりが今後の鍵。
- ELTRESトラッカーの活用
SONY製通信規格ELTRESを使用したトラッカーで、防災・農業・漁業への応用を検討。カキイカダ(養殖いかだ)に装着し、台風などでの被害状況を可視化する実証実験を進めている。
2-6. 上代工業株式会社 上代健一社長
- 経営の方針
作業者と「考えて改善する職人」を分けて捉え、「若者が憧れる職場をつくる」ことを目指す。2020年に社長就任後、部品加工だけに依存しないビジネスモデルに転換を図る。 - 組織改革とデジタル導入
- 書式改革で指揮・命令系統を明確化。
- 生産管理システムやiPadの配布、チームリーダー以上へのノートPC支給で、資料作成や情報共有を各自が主体的に行うように促進。
- 川崎市の経営革新シートを活用し、3Dモデルなどデジタルエンジニアリングを積極導入。
- 多能工化と福利厚生
一品物が多い環境でも生産性を高めるために多能工化を推進。さらに社員の交流を促すため、社内カフェやジムを設置。こうした改革によって有給取得率が20%から85%に向上。 - 新規展開と将来像
- 石垣島に「SINCA」というCADセンターを設置し、人材育成と地方創生を両立させる。
- 自社ブランド「HORIZON」でアウトドアグッズを販売。
- 将来的にはロボット活用や生成AIの導入など、20%程度の業務をデジタルに任せ、職人が主体となる職場を目指す。
3. 全体総評(西岡先生)
「ここまで聴きごたえがあるとは思わなかった。IT業界は海外技術を取り込むことで発展してきたが、製造業こそ既成概念を打ち壊し、新たな価値を生み出せる可能性を秘めている。『ものづくりって面白い』と思えた一日だった。」
4. Q&A
- Q:デジタル化を現場はどう感じているか?
A(上代社長):「最初は『職人がプログラムを書かずに機械が動くなんて邪道だ』と反対もあった。しかし、半年ほどで使いこなし、今では納得してくれている。」 - Q:なぜ石垣島にCADセンターを?
A(上代社長):「当初フィリピンを考えていたがコロナ禍で断念。たまたま石垣島を訪れた際、地元の高校で3DCADや3Dプリンター、NCを扱っていることを知った。優秀な人材が島にいても、就職のために本土へ出てそのまま戻らない現状がある。そこで川崎で働く機会を作り、最終的に地元へUターンできるモデルを描きたい。」
5. 川崎の総括(株式会社和興計測 五十嵐社長)
川崎市内には7つの工業会があり、行政と民間、そして民間同士が縦横につながる仕組みが整ってきている。大田区のように、川崎でもさらなる新技術や新しい事業へのチャレンジを支援していきたい。
本会合では多様な製造業者の先進的かつ実践的なDX事例が紹介され、大変有意義な時間となりました。今後も引き続き、各社の取り組みや連携について情報共有を深めてまいります。
次回は2025年5月を予定。

