議事録
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2025年7月19日
第8回
中小企業DX研究会
日時: 2025年7月18日(金)15:00-17:00(終了後懇親会)
場所: 法政大学新見附校舎9階サロン1
今回の研究会も、製造業における現場主導型のDX実践事例が共有され、デジタル技術と経営の両面から活発な議論が展開されました。
アジェンダ
1. 開会挨拶(西岡先生)
製造業の現場において、テクノロジーの導入は目的ではなく「価値の共創」であるべきと強調されました。経営者の目線と学術的視点の両立を重視し、本研究会から次の一歩が踏み出されつつあることに期待が寄せられました。
2. 実践報告・ディスカッション
登壇企業:金属製造業(鋳造・加工)
本会では、ある中小製造業の代表より、10年以上にわたるDXの実践プロセスが紹介されました。
事業承継の経緯と経営方針の転換
若くして家業に戻り、従来の「勘・経験・度胸(KKD)」型の現場から理論・データ活用へと舵を切った背景が共有されました。IoTセンサーの導入と設備の見える化
EnOcean(電池不要の無線センサー)を活用し、コンプレッサーや機械の稼働監視を実現。補助金の活用も含めて、現場主導で試行錯誤を重ねた様子が語られました。コミュニティ活動と人材育成
製造業×IoTの勉強会を自ら立ち上げ、そこで出会ったIT人材を自社に招いた事例は、人材獲得と育成の可能性を示唆しました。低コストDXの工夫
例えば市販のスマートライトやスイッチ操作ロボットなどを組み合わせ、電力制御・省エネ・アラート発信を実現。月10万円単位の節電成果が出ているとの報告もありました。システム活用と苦労
市販の生産管理システムの導入にはたびたび苦戦しながらも、クラウドツールやWeb関数を活用し、エクセルベースの情報集約を実現。社内の潜在的な人材力の発掘がDX推進の鍵になったとの示唆も得られました。
3. 議論と総括
参加者からは、生産計画と現場データの連携、原価計算のあり方、マスタレシピの自動化など、実務的な問いが多く寄せられました。
製品によって変わるボトルネック工程への対応が難しく、汎用スケジューラでは限界があること
配合計算における歩留まりと端材活用の両立が現場の知恵とデジタルの融合で成り立っていること
見積りは原価ベースではなく、顧客が感じる価値を重視していること
など、経営と現場が密接にリンクする中小企業ならではの課題と工夫が浮き彫りになりました。
4. 全体講評(西岡先生)
「遠回りをしながらも、現場の気づきと実践が着実に積み上がっていることが素晴らしい。まさにDXの本質は、経営や価値観の変革にあり、その一端が本会でも共有された。」
本研究会では、現場起点のDXがいかにして経営改革と結びついていくか、その生々しい実例とともに多くの学びが得られました。次回は2025年9~10月を予定しております。引き続き、実践的な情報交換と知見の深化を進めてまいります。