議事録
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2024年5月27日
第7回
中小企業DX研究会
日時: 2025年5月27日(火)15:00-17:00(終了後懇親会)
場所: 法政大学新見附校舎9階サロン1
1. 開会挨拶
主催者より、「本研究会では毎回、第一線の現場から貴重なお話を伺っており、今回も日本の中小企業におけるDXのリアルな取り組みに触れられることを楽しみにしている」との言葉で始まった。DXが“これからが本番”という認識のもと、多くの参加者が期待を寄せる中、会がスタート。
2. 基調講演・事例発表
製造業の現場から見たDXのリアル
ある鋳物メーカーの経営者より、実体験に基づいた取り組みが紹介された。
創業はVプーリー製造。現在はロボット部品や船舶エンジン部品などを供給。
一時は東京で音響エンジニアをしていたが、家業継承のため帰郷。
既存社員の反発に直面しながらも、自ら実践することで徐々に組織を巻き込んだ。
付加価値への転換
製品の価格を「キロ単価」で捉える業界慣習に疑問を持ち、納期対応などのサービスに価値を見出し、別途有償化。
顧客との信頼関係を基盤に、価格交渉力を獲得。
「脱・下請け」ではなく、「脱・下請け体質」を掲げ、自社の価値を再定義。
DX推進の実情と工夫
25年前は手書き帳簿・そろばんの時代。機器もCSV出力できないものばかりだった。
最初に来たプログラマーには「仕様が定まっていない」と指摘され、SEの必要性を痛感。
PLCやセンサーを繋ぎIoT化。Raspberry Piを活用した現場実験など、小規模でも工夫を重ねた。
社員の中にもシステム適性を持つ人材がいたことに気づき、引き上げて育成。
高額なパトライトを模倣し、安価な市販LED電球と浴室灯カバーで自作。コストダウンも実現。
3. パネルディスカッション
テーマ:DXは手段。価値をどう収益化するか
話題1:価値の収益化
「品質」「納期対応力」など目に見えにくい要素をどう価値として伝えるかが鍵。
他社が断るような難しい仕事を、あえて引き受ける方針の企業も。
「価格」ではなく「困っていることを解決する力」が真の価値となる。
適切な対価を得るには、顧客との信頼と説明力が必要。
話題2:見える化の意味
「見える化」は単なる数字ではなく、改善の起点。
作業の全体像がつかめないまま「とにかく頑張れ」となりがちな状況を避けるには、ボトルネックの特定が先決。
現場に合ったレベルのデジタル導入が重要。
話題3:リーダーシップと文化の変革
トップの“頑張る姿”は時にプレッシャーにもなる。任せる文化の醸成が鍵。
社長が採用活動を一手に引き受けていたが、チームで取り組むように変えてから、会社全体が前向きに。
働きやすい環境整備(例:年間休日の拡大)と、社員の自主性を引き出す仕組みづくりが進行中。
経営者が「主役」ではなく、社員一人ひとりを主役とする意識が重要。
4. 総評
「安価に応えることが価値」という過去の常識を問い直し、「困っている顧客に寄り添い、付加価値を提供すること」が中小製造業の新しい進路であるとの共通認識が形成された。
各社が試行錯誤のなかで着実に前進している姿勢に、参加者一同、深く共感。IT・デジタルを“手段”として活用しながら、価値や信頼を“本質”として捉える姿勢が印象的な会合となった。
5. 次回案内
次回の中小企業DX研究会は 2025年7月 を予定。より具体的な成果事例や地域連携についての報告も期待される。